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建築現場で使われるEPSの基礎知識と活用方法

建築現場で使われるEPSの基礎知識と活用方法

建築物には様々な設備や材料が使用されています。その中でもEPSという略語は、建築設備のスペースと建材の2つの意味を持っています。この記事では、建築におけるEPSの2つの意味と、その重要性について解説します。


建築におけるEPSとは何か

建築物において「EPS」という言葉は、Electric Pipe Space(電気配管スペース)と Expanded Polystyrene(発泡スチロール)という2つの異なる意味で使われています。これらは、建築物の機能と性能を支える重要な要素となっています。


建築設備としてのEPS定義と役割

Electric Pipe SpaceあるいはElectric Pipe Shaftの略称であるEPSは、建物内の電気配線や配管を通すための専用スペースです。外部から引き込まれた電気を分電盤や制御盤につなぎ、各フロアに配電するために必要不可欠な設備スペースとなっています。


このスペースは、建物の構造計画の段階から考慮され、コンクリートスラブにはあらかじめ縦方向に上下階をつなぐ配線や配管を通すための開口部が設けられます。EPSは建物の電気設備の基盤となる重要な空間です。


建材としてのEPS定義と特徴

建材としてのEPSは発泡スチロールの一種で、ビーズ法ポリスチレンフォームとも呼ばれています。この素材は断熱性能が高く、軽量で加工がしやすいという特徴があります。EPSは水との相性が良く、独立気泡構造により吸水性が低いため、長期間使用しても性能が劣化しにくい建材です。


また環境面でも配慮されており、フロンガスやホルムアルデヒドを使用していない点が評価されています。建築物の断熱材や型枠材として広く使用されています。


建築分野におけるEPSの重要性

建築設備としてのEPSは、現代の建築物に不可欠な電気設備を支える重要なインフラです。一方、建材としてのEPSは、建築物の省エネルギー性能を高め、快適な室内環境を実現する上で重要な役割を果たしています。


両者は異なる用途でありながら、どちらも建築物の品質向上に大きく貢献する要素となっています。設計段階から適切に計画することで、建物の長期的な性能維持にも役立ちます。


建築設備EPSの設計と施工のポイント

建築設備としてのEPSは、建物の規模や用途に応じて適切に計画する必要があります。設計時には将来の設備更新なども考慮に入れた余裕のある計画が求められます。


EPSの必要面積と配置計画

建築設備としてのEPSは、建物内の電気設備を効率的に配置するための重要なスペースです。規模は建物の用途や階数によって異なりますが、配線や配管の取り回しがしやすい位置に設置する必要があります。


特に電気室からの配線経路を考慮し、メンテナンス性にも配慮した計画が重要となります。将来の設備更新や増設の可能性も考慮に入れ、適切なスペースを確保することが求められます。


EPSと他の設備配管スペースの関係

EPSは電気設備用のスペースですが、建物には他にも給排水管用のPS(Pipe Space)や空調用のDS(Duct Space)などが必要です。これらの設備シャフトは適切な位置関係を保ちながら配置する必要があります。


特にPSは排水管の径が大きいため、EPSよりも広いスペースが必要となります。各設備スペースは建物の機能を支える重要な要素として、設計段階から慎重に検討されています。


建材EPSの種類と用途

建材としてのEPSには様々な種類があり、用途に応じて適切な製品を選択することが重要です。性能や特性を理解した上で使用することで、建物の品質向上につながります。


ビーズ法ポリスチレンフォームの製造方法

ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、ポリスチレン樹脂と発泡剤を主な原料として製造されています。発泡剤には環境に配慮してブタンやペンタンが使用され、特定フロンや代替フロンは一切使用されていません。


製造工程では、直径1ミリメートル程度のビーズ状の原料に発泡剤を吸収させ、高温の蒸気を当てながら圧力を加えて発泡させます。発泡したビーズは互いにくっつき合い、冷却されることで固体となります。この製造方法により、軽量で断熱性能の高い建材が生み出されているのです。


建材EPSの性能基準と分類

建材用EPSはJIS A9511「発泡プラスチック系保温材」において、特号から4号までの5種類に分類されています。密度は特号で27kg/m³以上、1号で30kg/m³以上、2号で25kg/m³以上、3号で20kg/m³以上、4号で15kg/m³以上と定められています。


各等級において熱伝導率や圧縮強さ、吸水量などの基準も定められており、これらの性能基準に基づいて用途に適した製品を選択することができます。


建材EPSが選ばれる理由

建材としてのEPSは、優れた性能と施工のしやすさから多くの建築現場で採用されています。環境への配慮も含め、総合的な観点から評価されている建材です。


断熱性能の長期安定性

建材EPSの断熱性能は極めて安定しています。気泡内のガスが空気と置換された後は、長期間にわたって性能が変化しにくい特徴があります。南極の昭和基地では40年以上使用されたEPSが、建築当初とほとんど変わらない断熱性能を保持していることが確認されています。


この安定性は他の断熱材にはない特徴で、建物の長期的な性能維持に貢献しています。また、独立気泡構造により吸水性が低く、水分による性能低下も起こりにくい材料です。


耐水性と施工性の高さ

EPSは水との相性が良く、独立気泡構造により吸水量が少ない特徴があります。これは長期間水に接する場所でも使用できることを意味します。また、軽量で加工がしやすく、現場での切断や調整も容易に行えます。


大型の建設機械を必要とせず、人力での施工も可能なため、狭い場所や高所での作業にも適しています。施工速度が早く、工期の短縮にも貢献する材料として評価されています。


環境性能とサステナビリティ

EPSは環境に配慮した建材として高く評価されています。製造過程でフロンガスを使用せず、ホルムアルデヒドも含まれていません。燃焼時にも有害なガスの発生が少なく、リサイクルも可能な材料です。


これらの特性から、グリーン購入法における特定調達品目にも指定されており、環境配慮型の建材として広く認知されています。また、断熱性能が高いことから、建物の省エネルギー性能の向上にも貢献しています。


EPSの施工における注意点

建材EPSを使用する際には、適切な施工管理と品質管理が必要です。特に防火性能と保管方法については、定められた基準に従って慎重に扱うことが求められます。


防火基準と安全対策

建材用EPSには難燃剤が添加されており、自己消火性を持っています。しかし建築基準法における不燃材料ではないため、使用方法には注意が必要です。特に、施工時は火気を近づけないようにしましょう。


建築基準法の改正により平成12年からは防火性能に関する基準が性能規定化され、壁全体として防火上必要な性能を満たすことが求められています。このため窯業系サイディングとの組み合わせなど、防火認定を取得した工法での使用が必要となっています。


保管と取り扱いのルール

EPSの保管には適切な環境と方法が必要です。保管時は平坦な場所に枕木を敷き、その上に水平に置きます。直射日光や雨風を避けるため養生シートで覆い、製品が変形しないよう適切な間隔で枕木を配置します。


運搬時には角欠けやロープの食い込みに注意が必要です。また紫外線による劣化を防ぐため、長期間の屋外露出は避けなければなりません。保管場所の選定と養生方法は、製品の品質維持のために重要な要素となっています。


まとめ

建築分野におけるEPSは、設備スペースとしてのElectric Pipe Spaceと、建材としてのExpanded Polystyreneという2つの重要な意味を持っています。特に建材としてのEPSは、優れた断熱性能と耐久性、そして環境性能を兼ね備えた素材として広く活用されています。


その性能を最大限に活かすためには、適切な設計と施工管理が不可欠です。構造物の設計や点検調査については、国土工営コンサルタンツ株式会社にご相談ください。豊富な実績を活かし、お客様のプロジェクトに最適なご提案をさせていただきます。

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