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橋梁の補修方法とは?補修が必要なケースや具体的な方法などを解説

橋梁の補修方法とは?補修が必要なケースや具体的な方法などを解説
日本全国には約70万もの橋梁があり、その多くが高度経済成長期に建設されました。建設から50年以上が経過した橋梁は全体の約4割を占め、早急な対策が必要とされています。本記事では、橋梁の補修が必要となるケースや具体的な補修方法、さらには今後の課題について、分かりやすく解説していきます。

橋梁とは
橋梁とは

橋梁は人や車両が川や谷、道路などの上を安全に通行できるように設置された構造物です。


日本には約70万橋の橋梁があり、その約4割が建設から50年以上経過しているため、老朽化対策が急務となっています。橋梁は私たちの生活に欠かせないインフラ設備であり、定期的な点検と適切な補修によって長寿命化を図ることが重要です。

橋梁の補修が必要なケース
橋梁の補修が必要なケース

橋梁の補修は、安全な交通網を維持するために欠かせない重要な取り組みです。補修が必要となるケースは大きく4つに分類され、それぞれの状況に合わせた適切な対応が求められます。


本章では、補修を必要とする代表的なケースについて、詳しく解説していきます。

部分的な破損がある場合

橋梁に部分的な破損が見られる場合、早急な補修が必要です。主な破損の例として、コンクリートのひび割れや剥離、鉄筋の露出などがあります。


これらの破損は、交通荷重や自然環境による劣化、事故などが原因で発生します。放置すると破損箇所から水分や塩分が侵入し、内部の劣化が進行するため、発見次第すぐに適切な補修工法を選択して対応することが重要です。

経年劣化している場合

長年の使用による経年劣化は、橋梁の安全性に大きな影響を与えます。主な劣化要因として、塩害、中性化、アルカリシリカ反応などがあります。特に沿岸部や凍結防止剤を使用する地域では、塩分による鉄筋の腐食が深刻な問題となっています。


定期点検で劣化状況を把握し、予防保全の観点から計画的な補修を行うことで、橋梁の長寿命化を図ることが可能です。

全体の建て替えが必要な場合

広範囲にわたる著しい劣化や損傷が見られる場合、全体の建て替えが必要となることがあります。これは、部分的な補修では構造物の安全性を確保できない状態や、補修コストが建て替えよりも高くなる場合に検討されます。


建て替えを行う際は、交通規制や迂回路の確保など、利用者への影響を考慮した慎重な計画が必要です。

予防や強化などをする場合

予防保全の観点から、将来的な劣化を防ぐための補修や補強を行うことがあります。橋梁の耐久性を向上させ、維持管理コストの削減にもつながります。具体的には、防水工事による水の侵入防止や、表面被覆による劣化因子の遮断などが行われます。


また、地震対策として耐震補強を実施するケースもあり、橋梁の安全性向上に貢献します。

橋梁の補修方法とは
橋梁の補修方法とは

道路や鉄道の重要なインフラである橋梁の補修には、様々な工法が存在します。橋梁の素材や劣化状態によって最適な工法が異なり、時には複数の工法を組み合わせることもあります。また、新しい技術の開発により、より効果的な補修方法も生まれています。


本章では、コンクリート橋と鋼橋それぞれの主な補修工法について、その特徴と適用場面を詳しく見ていきます。

素材による違い

橋梁の補修方法は、使用されている素材によって大きく異なります。


コンクリート橋では、ひび割れや中性化、塩害などへの対策が中心となり、表面処理や内部補修などの工法が用いられます。一方、鋼橋では腐食や疲労への対策が重要で、防水や補強工法が主となります。


それぞれの素材特性を理解し、劣化状況に応じた適切な工法を選択することで、効果的な補修が可能です。

コンクリート

コンクリート製の橋梁は、中小橋で使われることが多く、強度と耐久性から日本の道路橋の主流となっています。


しかし、経年劣化による様々な損傷が課題となっており、塩害、中性化、アルカリシリカ反応などが主な劣化原因です。特に沿岸部や寒冷地では、塩分や凍結防止剤の影響で劣化が加速する傾向にあります。


補修方法は劣化状況に応じて10種類以上の工法から選択され、複数の工法を組み合わせることも一般的です。

ひび割れ補修工法

ひび割れ補修工法は、コンクリート表面に発生したひび割れを修復する方法です。主に被覆工法、充填工法、注入工法の3種類があります。エポキシ樹脂などを注入したり、ポリマーセメントを充填したりすることで、ひび割れ部分を一体化させます。


この工法により、水分や塩分の侵入を防ぎ、内部の劣化を抑制できます。早期発見・早期補修が効果を高める重要なポイントです。

断面修復工法

断面修復工法は、劣化や損傷によって欠損した部分を元の状態に戻す工法です。


左官工法、充填工法、吹付け工法などがあり、ポリマーセメント系のモルタルを使用して修復を行います。特に鉄筋が露出している場合は、防錆処理と組み合わせることで効果的な補修が可能です。修復後の強度確保と、既存部分との一体化が重要なポイントとなります。

部分打ち替え工法

部分打ち替え工法は、損傷が著しい部分を新しいコンクリートで置き換える方法です。


床版や壁高欄など、局所的な損傷に対して効果的です。鉄筋の継手部分を確保しながら損傷箇所を切断し、新たな鉄筋を設置してコンクリートを打設します。橋梁全体への影響が少ない部位に適用され、部分的な強度回復が可能となります。

防錆処理工法

コンクリートをはつり、露出した鉄筋の錆を除去し、防錆材を塗布する工法です。


使用する防錆材には、エポキシ樹脂塗料やポリマーセメント系塗布材などがあります。鉄筋の腐食進行を抑制する効果があり、特に塩害や中性化により劣化が進んでいる場合に効果的です。暫定的な対策として実施されることもありますが、他の工法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

防水工法

防水工法は、コンクリートの内部に水が浸透するのを防ぐ方法です。


シート系と塗膜系の2種類があり、現場の状況に応じて選択します。シート系は高い耐久性を持ち、塗膜系は施工が容易という特徴があります。橋面からの雨水侵入を防ぎ、床版の劣化を抑制することで、橋梁の寿命を延ばすことが可能です。定期的な点検と適切なメンテナンスが必要な工法です。

表面被覆工法

表面被覆工法は、コンクリート表面を塗装材で覆い、劣化要因となる水分、塩分、炭酸ガス、酸素などの侵入を防ぐ方法です。特に塩害による劣化が懸念される場合は、その環境に適した塗装材料を選定する必要があります。


施工が比較的容易で、予防保全として広く活用されています。定期的な点検により塗装の劣化状態を確認し、必要に応じて再塗装を行うことが重要です。

全体打ち替え工法

全体打ち替え工法は、著しい劣化や損傷が広範囲に及ぶ場合に選択される方法です。既存の部分を完全に撤去し、同じ形状の部材で新しく打ち替えを行います。


交通規制が必要となる場合が多く、工期や費用の面で慎重な検討が求められます。ただし、根本的な解決が可能で、構造物の耐久性を大幅に向上させることが可能です。

電気防食工法

電気防食工法は、コンクリート内部の鉄筋の腐食を電気化学的に防止する最新の技術です。


コンクリート内の鉄筋を陰極、表面に設置したチタン金属を陽極として直流電流を流すことで、鉄筋の腐食を抑制します。従来の工法と比べて長期的な防食効果が期待でき、特に塩害による劣化が進んだ橋梁に効果的です。定期的なモニタリングと適切な電流管理が重要となります。

脱塩工法

脱塩工法は、塩害により劣化が進行したコンクリート内部から塩分を除去する補修方法です。外部電極を設置し、コンクリート内の鉄筋との間に直流電流を流すことで、内部の塩分を取り出します。断面修復工法を適用しない場合の有効な対策として知られており、鉄筋の腐食を防止する効果があります。


施工には専門的な技術と知識が必要で、工期も比較的長くなる特徴があります。

再アルカリ化

再アルカリ化工法は、中性化が進行したコンクリートを修復する方法です。


コンクリート表面に設置した電極と内部の鉄筋との間に直流電流を流し、アルカリ性溶液をコンクリート内に浸透させます。これにより、中性化したコンクリートを再びアルカリ性に戻し、鉄筋の防食環境を回復させることが可能。効果の持続性が高く、中性化対策として注目されている工法です。


メタル

主に長大橋で使われることが多い鋼橋は高い強度と施工の柔軟性を持つ一方で、錆や腐食への対策が重要となります。特にRC床版(鉄筋コンクリート床版)との接合部分は、水分や塩分の影響を受けやすく、定期的な点検と適切な補修が必要です。


金属部分の補修には6つの主要な工法があり、損傷状況や環境条件に応じて最適な工法を選択します。予防保全の観点から、早期発見・早期補修が重要となります。

橋面防水

橋面防水工法は、鋼橋のRC床版を保護するための重要な工法です。


雨水や融雪剤に含まれる塩化物イオンが床版内部に浸透することを防ぎ、鋼材や床版の劣化を抑制します。高い防水性能と耐久性が求められ、交通荷重による影響も考慮して材料を選定します。適切な施工と定期的な点検により、床版の長寿命化を図れます。

上面増厚

上面増厚工法は、既存の床版上面に鋼繊維補強コンクリートを打ち増しする方法です。


まず床版表面を切削してブラスト処理を行い、その後で鋼繊維補強コンクリートを打設します。この工法により床版の強度が向上し、工期短縮や施工コストの削減も実現できます。交通量の多い橋梁でも比較的短期間で施工が可能なため、実用的な補修方法として注目されています。

下面増厚

下面増厚工法は、橋梁の床版下面から補修を行う方法です。


交通規制を必要としない大きな利点があり、床版の長寿命化に効果的です。補修材料には繊維補強モルタルなどが使用され、既設床版との一体性を確保することで高い補強効果が得られます。施工時は床版下面からの作業となるため、安全管理と品質管理に特に注意を払う必要があります。

縦桁増設

縦桁増設工法は、主桁が鋼製の鉄筋コンクリート床版を補強する方法です。


既存の横桁に新しい縦桁を増設することで、床版の支持間隔を短くし、曲げ耐力を向上させます。交通荷重による床版への負担を軽減できる効果的な補強方法ですが、施工には高度な技術と綿密な計画が必要です。

炭素繊維接着工法

炭素繊維接着工法は、腐食した鋼橋の補修に用いられる最新の工法です。


炭素繊維シートやストランド型炭素繊維シート、炭素繊維強化樹脂成型板などを使用します。軽量で高強度という特徴を持ち、施工も比較的容易です。既存の鋼材に接着することで補強効果を発揮し、橋梁の耐荷力向上に貢献します。

プレキャストPC軽量床版工法

プレキャストPC軽量床版工法は、工場で製作された高品質なプレキャスト部材を現場で組み立てる方法です。


橋軸方向に分割した部材を接合して一体化することで、強度と耐久性に優れた床版を構築できます。現場での施工期間を短縮できる利点がありますが、部材の運搬や設置には特殊な機械が必要となります。

橋梁補修の今後の課題
橋梁補修の今後の課題

橋梁補修における主な課題は、予算の確保と技術者の育成です。特に地方自治体が管理する橋梁では、点検は計画通りに進んでいるものの、予算や人材の不足により必要な補修が遅れがちです。


また、新技術の導入による長寿命化やコスト削減の実現も重要な課題となっています。ドローンやAIを活用した点検技術の開発など、効率的な維持管理システムの構築が求められています。

まとめ

橋梁の補修は、安全で快適な交通網を維持するために不可欠な取り組みです。劣化状況や素材に応じて適切な工法を選択し、計画的な補修を実施することが重要です。今後は予防保全の考え方を基本とし、新技術も積極的に活用しながら、効率的な維持管理を進めていく必要があります。


定期的な点検と適切な補修により、橋梁の長寿命化を実現し、社会インフラの安全性を確保していきましょう。

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