
コラム
ICTを土木工事に導入する方法|メリットや導入事例、課題について

土木工事の現場では、人手不足や作業効率の向上が大きな課題です。そこで注目されているのがICT(Information and Communication Technology)を活用した土木工事です。ICTを導入することで、測量から設計、施工、検査まで、あらゆる工程で効率化が図れます。
この記事では、ICT土木工事の基礎知識から実際の導入事例、課題まで詳しく解説していきます。
ICT土木工事とは

建設現場では従来、測量や設計、施工、検査といった各工程で多くの人手と時間が必要でした。ICT土木工事は、これらの工程にICT(Information and Communication Technology)を導入することで、作業の効率化と省人化を実現する新しい工事手法です。
以下でその具体的な内容について説明します。
意味
ICT土木工事とは、測量、設計、施工、検査といった一連の土木工事プロセスにICTを全面的に活用する取り組みです。具体的には、ドローンを使った3次元測量、3次元データを活用した設計、ICT建機による施工、自動化された検査システムなどを指します。従来の手作業や目視に頼っていた作業を大幅に効率化し、工期短縮や品質向上が期待できます。
導入の背景
建設業界では深刻な人手不足と高齢化が進んでおり、2025年までに約110万人の技能労働者が離職すると予測されています。さらに、長時間労働や休日の少なさといった労働環境の改善も課題となっています。
このような状況を改善するため、国土交通省が2016年から「i-Construction」
を推進し、その中核としてICT土木工事の導入を進めています。
ICT土木工事の種類

土木工事の現場では、測量から検査まで様々な工程でICTが活用されています。それぞれの工程で最適な技術や機器が選択され、従来の人手に頼る作業から、デジタル技術を活用した効率的な作業へと変わってきています。
各工程でどのようなICTが使われ、どのような効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
測量
従来は複数の作業員が現場で測量機器を使って計測する必要がありました。しかし今では、ドローンやレーザースキャナーによる3次元測量が主流です。
数日かかっていた測量作業はわずか数時間で完了。さらに、従来の方法では難しかった危険地帯や急傾斜地でも安全に測量できるようになりました。得られた3次元データは設計にそのまま活用できるため、作業の連続性も格段に向上したのです。
設計
3次元測量データを基にした設計作業は、従来の2次元図面とは一線を画します。立体的に完成形をイメージでき、土量計算や施工シミュレーションも思いのまま。設計データはクラウド上で共有されるため、関係者全員が同じ情報を基に作業を進められる点も大きな特徴です。このデータは施工段階でのICT建機制御にも直接活用され、一貫した施工管理を可能にしています。
現場施工
ICT建機による施工では、3次元設計データに基づいて建機が自動制御されるため、驚くほど正確な作業が実現できます。
オペレーターの経験に左右されることなく、常に高精度な施工が可能に。GPSやセンサーを活用したリアルタイムでの施工管理により、手戻りのない効率的な現場運営が実現しているのです。
検査・管理
検査工程は、ICT導入によって大きく様変わりしました。これまでの目視確認や煩雑な書類作成から解放され、3次元データを活用した自動化された検査へと進化したのです。
ドローンによる出来形測量やセンサーによる品質管理は、検査時間の短縮だけでなく、精度向上にも大きく貢献しています。さらに、すべてのデータがクラウド上で一元管理され、電子納品にもスムーズに対応できる環境が整いました。
ICT土木工事に使われる機器

ICT土木工事では、各工程に応じて様々な最新機器が導入されています。ドローンによる測量、GPS制御の建設機械、IoTセンサーによる管理システムなど、それぞれの機器が持つ特徴や機能を活かすことで、工事全体の生産性向上を実現しています。
ここでは、主要な機器の特徴と活用方法について解説します。
ドローン
土木現場での測量作業に革新をもたらしたドローンは、わずか20分程度で広大な現場の3次元データを取得できます。
搭載されたカメラやレーザースキャナーが地形を精密に計測し、その精度は従来の測量と比べても遜色ありません。急斜面や崖地など、人が立ち入るのが危険な場所でも安全に測量が可能です。また、工事の進捗確認や完成検査にも活用され、測量から検査まで幅広い用途で活躍しています。
ICT建機
GPSとセンサーを搭載したICT建機は、3次元設計データに基づいて自動制御される次世代の建設機械です。
ブルドーザーやバックホウなどの建機に搭載され、設計データ通りの高精度な施工を実現。熟練オペレーターでなくても、設計値に沿った正確な作業が可能なため、人手不足の解消にも有効です。さらに、作業データは自動で記録され、施工管理の効率化にもつながっています。
カメラ・センサー
工事現場の安全管理や品質管理に欠かせないのが、各種カメラとセンサーです。
固定カメラやウェアラブルカメラで現場をリアルタイムに監視し、遠隔での施工管理を実現。IoTセンサーは地盤の変位や構造物の変形を常時計測し、異常の早期発見に役立っています。これらのデータはクラウド上で一元管理され、工事の安全性と品質の向上に大きく寄与しているのです。
ICT土木工事のメリット

建設現場へのICT導入は、人手不足の解消から作業効率の向上、安全性の確保まで、様々な効果をもたらしています。従来の建設現場が抱えていた課題の多くが、ICT活用によって解決の方向に向かっています。
建設業界の働き方改革にも大きく貢献する、ICT導入のメリットについて詳しく見ていきましょう。
人手不足が解消される
経験の浅い作業員でも高度な作業が可能になり、人手不足の解消に大きく貢献しています。
ICT建機は熟練オペレーターでなくても正確な施工ができ、測量作業も少人数で効率的に実施できます。また、遠隔での施工管理により、一人の管理者が複数現場を同時に監督することも可能になりました。建設業界の深刻な人手不足の解決策といえるでしょう。
施工全体の効率が上がる
測量から検査まで、すべての工程でスピードアップと効率化が実現しています。
ドローンによる測量は従来の10分の1の時間で完了し、ICT建機による施工は作業効率を30%以上向上させました。さらに、3次元データの活用で手戻りが減少し、検査書類の作成も自動化されています。工期の短縮とコスト削減が同時に実現できる点は、大きな魅力です。
安全性が向上する
危険を伴う作業が大幅に削減され、現場の安全性が飛躍的に向上しました。
測量時の転落リスクはドローンの活用で解消され、ICT建機の導入で接触事故のリスクも激減しています。また、各種センサーによる24時間モニタリングで、地盤の変状や気象の変化も素早くキャッチできます。作業員の安全を守りながら、確実な施工を実現できる環境が整ったのです。
ICT土木の導入事例

ICT土木工事の導入は、様々な現場で成果を上げています。
規模や工種の異なる3つの導入事例を通して、ICT活用の実態と効果を具体的に見ていきましょう。導入を検討している企業の方々にとって、参考となる事例を紹介します。
事例1:山間部での道路拡幅工事
急斜面での測量が必要な山間部の道路拡幅工事では、ドローンとICT建機を組み合わせた施工を実施しました。
従来なら2週間かかる測量作業がドローンで2日に短縮できます。危険な斜面での測量作業も不要となり、作業員の安全性が大幅に向上しました。ICTブルドーザーによる施工では、熟練オペレーター不在でも設計通りの精度の高い工事が実現。工期を30%短縮する成果を上げたのです。
事例2:河川工事での遠隔施工管理
複数地点で同時進行する河川改修工事では、クラウドカメラとウェアラブルカメラを活用した遠隔施工管理を導入しました。
現場に固定カメラを設置し、作業員はウェアラブルカメラを装着。本社の管理者が映像をリアルタイムで確認しながら、的確な指示を出せる体制を構築したのです。その結果、現場への移動時間が削減され、管理者一人当たりの監督可能現場が2倍に増加しました。
事例3:大規模土工事での全面的ICT導入
大規模な造成工事では、測量から検査まで全工程でICTを導入しました。
3次元レーザースキャナーによる地形測量、ICTショベルとブルドーザーによる施工、ドローンでの出来形管理を実施。施工データはクラウドで一元管理し、工事関係者全員がリアルタイムで情報を共有できる環境を整えました。その結果、作業効率が40%向上し、必要な作業員も従来の3分の2に削減。品質面でも高い精度を実現しています。
ICT土木工事の課題

ICT土木工事は多くのメリットをもたらす一方で、実際の導入や運用には様々な課題が存在します。これらの課題を把握し、適切な対策を講じることが、ICT導入を成功に導くポイントとなります。
ここでは、現場で直面する具体的な課題と、その対応策について解説していきます。
すべての現場や施工に対応できるわけではない
小規模工事や複雑な地形での工事など、ICT施工が適さない現場も少なくありません。特に狭小地での作業や、樹木が密集する場所でのドローン測量は困難を極めます。また、従来工法との併用が必要な場合も多く、ICT施工だけで完結できない現場がほとんど。現場条件を見極めた上で、適切な導入範囲を判断する必要があるでしょう。
導入や運用のコストがかかりやすい
ICT建機のリース料や3次元測量機器の購入費用、データ処理のためのソフトウェア導入費など、初期投資が大きな負担となります。また、クラウドサービスの利用料や機器のメンテナンス費用など、運用面でも継続的なコストが発生。特に中小企業にとって、この経済的負担は大きな課題です。
ICT技術を管理・使用する人材の育成が難しい
3次元データの作成・編集や、ICT建機の操作など、新たな技術の習得が必要です。ベテラン作業員の中には、デジタル機器の操作に不慣れな人も多く、教育に時間がかかります。また、ICT施工全体を管理できる技術者の育成も急務ですが、体系的な教育システムはまだ発展途上。人材育成には相当の時間と労力を要するのが現状です。
建設・土木業界全体の労働者が確保できない
ICT化が進んでも、現場作業を完全になくすことはできません。しかし、建設業のイメージ改善は簡単ではなく、若手人材の確保は依然として困難を極めています。また、ICT化によって必要となる新たな専門技術者の採用も難しく、人材不足は業界全体の大きな課題となっているのです。
まとめ
ICT土木工事は、建設現場の生産性向上と働き方改革に大きな可能性を秘めています。ドローンやICT建機、各種センサーの活用により、作業効率の向上や安全性の確保が実現できます。
しかし、導入コストや人材育成など、解決すべき課題も少なくありません。これらの課題に向き合いながら、各現場の実情に合わせた適切なICT活用を進めることが、今後の建設業界には求められています。