
コラム
建設コンサルとは?仕事内容や平均年収、やりがいや必要資格などを紹介

私たちの身近にある道路やトンネル、ダムなどのインフラ整備。その円滑な進行を支えているのが建設コンサルタントです。計画から設計、施工管理まで幅広い分野で専門的なアドバイスを行い、安全で快適な社会づくりに貢献しています。
この記事では、建設コンサルタントの仕事内容や年収、必要な資格からおすすめの企業まで詳しく解説していきます。
建設コンサルとは

建設コンサルタントは、社会資本整備のなかで、これまで主として調査・計画・設計等の業務において事業者の事業執行を支援する役割を担っています。近年、社会資本整備を取り巻く環境が大きく変化する中で、これまでに蓄積した技術、知識、人材等を最大限に活用するとともに、様々な領域で責任ある立場で活躍することで、社会資本整備の推進に貢献します。
まずは、建設コンサルタントとはどんな仕事か見ていきましょう。
建設コンサルタントの業務内容
主な計画・調査・設計・監理業務を中心
社会資本整備を行う上で法令、基準に準拠した計画の立案とともに、測量や調査を実施することで条件整理を行った結果を反映して、設計を実施します。
計画の立案は、新設道路でルート案を選定する場合、クライアントから提示された条件の中で、第1案を最短ルート案、第2案を経済性を優先したルート案、第3案はなるべく短いルートで経済性も考慮したルート案を立案します。クライアントのイメージに近い案を利用して更に要求された内容に近づけた調整を行った上でルートを選定します。
測量や調査は、選定したルートに対して測量を実施して平面図、縦断図、横断図を作成し、道路施設設置位置の土質調査を行うことで、設計条件の整理を行います。
設計は、収集した図面や調査結果を基にして、構造物形式に応じて施工の要否や経済性等の比較検討して最適なものを提案します。クライアントの決定事項に従い、構造物の設計計算を実施して詳細な設計を行います。
成果品作成は、計画案から測量、調査結果、設計結果や設計図面を各項目にとりまとめて、書類を作成します。
よって、主な仕事はクライアントの事業執行の支援となります。
主な部門(21部門)
・河川、砂防及び海岸・海洋部門 ・都市計画及び地方計画部門
・港湾及び空港部門 ・地質部門
・電力土木部門 ・土質及び基礎部門
・道路部門 ・鋼構造及びコンクリート部門
・鉄道部門 ・トンネル部門
・上水道及び工業用水道部門 ・施工計画、施工設備及び積算部門
・下水道部門 ・建設環境部門
・農業土木部門 ・機械部門
・森林土木部門 ・電気電子部門
・水産土木部門
・廃棄物部門
・造園部門
建設コンサルの平均年収とは

建設コンサルタントの平均年収は約496万円で、日本の平均給与より約30万円高い水準です。大手企業では900万円を超えることも珍しくありません。経験や保有資格によって年収は大きく変動し、技術士などの高度な資格を持つベテランは1,000万円以上の収入を得ることも。また、プロジェクトの規模や重要性によって、評価や報酬が変わることも特徴的です。
建設コンサルの仕事内容とは

社会インフラの整備には、様々な専門知識と技術が必要不可欠です。建設コンサルタントは、プロジェクトの企画から完成後のメンテナンスまで、幅広い業務を担当します。現場調査、設計書の作成、クライアントとの打ち合わせなど、その仕事は多岐にわたります。
ここでは、建設コンサルタントの具体的な業務内容を解説します。
現場の調査や分析
建設コンサルタントの重要な業務は、現場の状況を正確に把握することです。地盤の強度や周辺環境への影響、交通量の調査など、様々なデータを収集し分析します。最新の測量機器やドローンなども活用しながら、精密な調査を実施。これらの結果は、後の設計や計画の基礎となる重要な情報になります。
書類の作成
建設コンサルタントは、収集したデータを基に様々な書類を作成します。設計図や施工計画書、環境アセスメント報告書など、プロジェクトに必要な文書を作り上げます。各種法規制や技術基準に準拠しながら、正確で分かりやすい資料を準備。これらの書類は、工事の許認可申請や予算計画の根拠となります。
安全性や利便性のアドバイス
専門家としての知見を活かし、インフラの安全性や利便性を高めるための提案を行います。地震や水害などの自然災害への対策、周辺環境との調和、利用者の使いやすさなど、多角的な視点から検討。限られた予算の中で最適な解決策を見出し、クライアントに提示することが求められます。
クライアントとのミーティング
プロジェクトの方向性を決める重要な場面が、クライアントとの打ち合わせです。国や自治体、建設会社との協議で、予算や工期、技術的な課題について話し合います。専門的な内容を分かりやすく説明し、関係者との合意形成を図ることも重要な役割。時には地域住民への説明会にも参加します。
建設コンサルに必要な資格とは

建設業界では資格が重要な意味を持ちます。建設コンサルタントとして活躍するには、技術士やRCCMなど、専門性の高い資格が必要になるケースが多いでしょう。また、これらの資格は収入アップにもつながります。
ここでは、建設コンサルタントに役立つ主な資格を解説します。
技術士
建設コンサルタント業務における国家資格です。
理論と実務の両面で高度な専門性を求められ、取得者には確かな技術力が保証されます。技術士を持っているだけで、クライアントからの信頼度が格段に上がります。建設関連部門の他、環境や情報工学など、21の技術部門から選択できます。第一次試験は誰でも受験は可能ですが、第二次試験は技術士補を登録して指導技術士のもとで実務経験4年で最短の受験資格を得られます。試験は厳しく、第一次試験、第二次試験ともに合格率は20%以下です。国土交通省の建設コンサルタント登録を受けようとする場合には、登録部門ごとに技術士資格が必要であるため、建設コンサルタントで最有力な資格となっています。
シビル コンサルティング マネージャ(RCCM)
建設コンサルタント業務における民間資格です。
この資格は建設コンサルタント業務において技術士以外で「管理技術者」や「照査技術者」として認められます。資格を取得するには実務経験が必要ですが、技術士より合格率は高いこともあるので、建設コンサルタント業に従事するための有益な資格とも言えます。
土木施工管理技士
建設現場の施工管理に必要な国家資格です。
この資格があれば、現場の管理や監督業務に携われます。建設会社だけでなく、建設コンサルタントとしても強みになる資格です。設計と施工の両方の知識を持つことで、より実践的な提案が可能になります。
測量士
正確な測量技術を持つ専門家として認められる国家資格です。
基準点測量や地形測量など、土木工事に欠かせない測量業務を担当できます。GPSやドローンなど、最新の測量技術も習得しておく必要があります。建設コンサルタントとして、より正確な現場データを収集・分析するために、重要なスキルです。
建設コンサルのメリットとは

建設コンサルタントという仕事には、多くの魅力的な特徴があります。社会への貢献度が高く、専門性を活かした仕事ができる点は、多くの技術者が感じるやりがいです。また、高い収入や安定した雇用など、待遇面でも優れた職業といえます。
ここでは、建設コンサルタントの主なメリットを解説します。
人々の生活を支える仕事ができる
設計コンサルタントは、人々の暮らしに直結するインフラ整備に携わります。道路や橋、上下水道など、私たちの生活に欠かせない施設の計画や設計を担当します。
自然災害から街を守る防災施設の提案や、環境に配慮した街づくりの提案など、社会に大きな影響を与える仕事ができます。完成したインフラを見たときの達成感は、この仕事ならではの醍醐味です。
資格や知識を活かせる
技術士やRCCMなど、難関資格の知識を存分に活かせる仕事です。専門的な知識が必要な場面も多く、日々の業務を通じてスキルアップを図ることが可能です。
また、新しい技術や工法を学ぶ機会も豊富で、技術者として成長し続けられる環境があります。実務で得た経験は、さらに上位の資格取得にもつながります。
高収入につながる
建設コンサルタントは建設業界の中でも比較的高収入が望める職種です。経験を積んで実績を上げれば、年収1000万円も夢ではありません。資格の取得は収入アップに直結し、プロジェクトの規模や重要性に応じて評価も変わります。
また、残業手当やプロジェクト手当など、様々な手当も充実しています。技術力が正当に評価され、それが収入に反映される仕組みが整っています。
転職にも有利になる
建設コンサルタントの経験は、建設業界で高く評価されます。プロジェクトの企画から完了まで、幅広い業務に携わることで、総合的な視野が身につきます。
また、様々な資格や実績を積み重ねることで、市場価値も自然と高まります。ゼネコンやデベロッパー、官公庁など、活躍できるフィールドも広がり、キャリアアップの選択肢が豊富にあります。
建設コンサルのデメリットとは

建設コンサルタントの仕事には、やりがいや好待遇といった魅力がある一方で、いくつかの課題もあります。長時間労働や重い責任、継続的な勉強の必要性など、覚悟を持って臨むべき面もあります。
ここでは、建設コンサルタントの主なデメリットを解説します。
労働時間が長く体力的にきつい
建設コンサルタントの業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。そのため、一人当たりの仕事量が多くなりがちです。プロジェクトの締め切りに追われ、残業が増えることも珍しくありません。
また、現場への出張や立ち会いなど、体力を使う業務も多いのが特徴です。天候に左右される現場調査や、緊急時の対応など、不規則な勤務を強いられることもあります。
責任が重く精神力が求められやすい
社会インフラの整備は人々の生命や安全に直結します。そのため、設計ミスや判断の誤りが重大な事故につながる可能性があり、常に緊張感を持って仕事に臨む必要があります。
また、大規模プロジェクトでは莫大な予算が動くため、コスト面での責任も重大です。クライアントとの調整や地域住民との合意形成など、ストレスの多い場面も少なくありません。
知識や情報のアップデートが大変
土木工学の分野は日々進化しています。新しい工法や材料、環境技術など、常に最新の情報をキャッチアップする必要があります。
また、法改正や技術基準の変更にも敏感でなければなりません。資格の維持や更新のための学習も欠かせず、業務の傍ら継続的な勉強が求められます。
建設コンサルのおすすめ大手3社

建設コンサルタント業界には、豊富な実績と高い技術力を持つ企業が数多く存在します。中でも大手企業は、充実した研修制度や福利厚生、安定した給与体系を備えており、キャリアを築く場として人気です。
ここでは、特に注目の大手3社を解説します。
日本工営株式会社
160か国以上で実績を持つ、国内最大級の建設コンサルタント企業です。70年以上の歴史を誇り、道路や河川、都市計画など、幅広い分野で高い技術力を発揮しています。社員の定着率は95%を超え、働きやすい環境が整っているのが特徴です。
近年は防災システムの開発など、新技術への投資も積極的に行っています。海外プロジェクトも多く、グローバルに活躍できる機会が豊富です。
八千代エンジニアリング株式会社
国内外で幅広いプロジェクトを手がける総合建設コンサルタントです。技術士や一級建築士など、多くの有資格者が在籍し、高度な技術力を誇ります。特に環境分野や防災分野での実績が豊富で、持続可能な社会の実現に向けた提案力には定評があります。中堅社員の活躍も目立ち、若手技術者の育成にも力を入れています。
株式会社建設技術研究所
日本初の建設コンサルタント企業として70年以上の歴史を持つ老舗です。特に河川分野での技術力は業界トップクラスで、水害対策や環境保全に関する豊富な実績があります。
国土交通省からの表彰も多く、高い信頼を得ています。研究開発にも積極的で、最新技術を活用した提案力も魅力です。新卒採用も毎年50名以上と安定しており、若手の育成環境も整っています。
まとめ
建設コンサルタントは、私たちの生活に欠かせない社会インフラの整備を支える専門家です。高度な技術力と幅広い知識が必要とされる一方で、やりがいのある仕事として注目を集めています。確かに長時間労働や重い責任など、課題もありますが、社会への貢献度が高く、専門性を活かせる魅力的な職業といえます。
興味を持った方は、必要な資格の取得を目指しながら、自分に合った企業を探してみてはいかがでしょうか。