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建設業の人材不足の現状とは?2025年問題や人材不足のリスク、解決策などを考えよう

建設業の人材不足の現状とは?2025年問題や人材不足のリスク、解決策などを考えよう

建設業界では深刻な人材不足が続いており、今後も高齢化や若年層離れによってさらに深刻化すると予測されています。本記事では、建設業の人材不足の現状と2025年問題、その原因やリスク、そして具体的な解決策について詳しく解説します。

建設業界の人材不足の現状
建設業界の人材不足の現状

国土交通省の統計では就業者数が1997年から2022年までに約30%も減少し、一方で建設投資額は急増中です。この需給バランスの崩れが業界全体に影響を与え、人手不足倒産も増加しています。

ここでは、具体的なデータから見る建設業の労働人口や2024年問題・2025年問題、関連法案の影響について解説します。

現在の建設業の労働人口

建設業の労働人口は年々減少しており、国土交通省の資料によれば1997年のピーク時の685万人から2022年には479万人と、約30%も減少しています。さらに、労働者の年齢構成を見ると、55歳以上が全体の約36%を占める一方、29歳以下はわずか約12%にとどまっています。

このような人口構成の偏りは、今後の人材不足をさらに加速させる要因となり、将来的な技術継承にも大きな影響を与えることが懸念されています。

2024年問題

建設業界における「2024年問題」とは、2024年4月から建設業にも労働時間の上限規制が適用されることを指します。働き方改革の一環として、これまで猶予されていた時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、月45時間・年360時間を超えて時間外労働をさせることが原則としてできなくなります。

長時間労働が常態化している建設業では、規制により労働者1人あたりの作業量が減少し、企業の利益減少や労働者の収入減少が懸念されています。対応が不十分な企業では経営危機に陥るリスクもあるでしょう。

2025年問題

「2025年問題」とは、団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に、医療費や介護費の社会保障費が急増する問題を指します。

建設業では現在、60歳以上が就業者の約4分の1を占めており、この世代が引退すると労働力が大幅に減少します。国土交通省の試算では、2025年には建設業界で約90万人の労働人口が不足すると予測されています。

したがって、工期の長期化やコスト増加など、建設業の基盤そのものを揺るがす深刻な影響が予想されています。

法整備や制度改正による影響

建設業界に関わる法整備や制度改正は人材確保に大きな影響を与えています。

2018年に改正された「出入国管理法」により創設された「特定技能」在留資格は、外国人材の受入れ拡大に寄与しています。また「建設キャリアアップシステム」の導入により、技能者の経験や資格が可視化され、適正な評価と処遇の実現が期待されています。一方、2023年10月からのインボイス制度導入は、一人親方の減少を招く可能性があります。

制度の変更は、業界の構造改革を促す一方、短期的には混乱を招くリスクも含んでいます。

建設業界で人材不足が進行している理由
建設業界で人材不足が進行している理由

建設業界の人材不足は単なる少子高齢化だけでは説明できません。業界特有の労働環境や賃金体系、イメージの問題など複数の要因が複雑に絡み合っています。

ここでは、高齢化と若手不足の実態、建設需要の増加、給与水準の問題、そして業界イメージについて分析し、なぜ人材確保が困難になっているのかを明らかにします。

労働年齢が高齢化し若年層が少ない

建設業界では労働者の高齢化が顕著で、国土交通省の資料によると、就業者の約36%が55歳以上である一方、29歳以下はわずか約12%に過ぎません。若年層の建設業離れの背景には、「3K(きつい・汚い・危険)」といったネガティブなイメージや、他業界と比較して厳しい労働環境があります。さらに、新規高卒者の3年以内離職率は約43%と全産業平均の約38%より高く、入職してもすぐに離職してしまう傾向があります。

若年層の採用難と早期離職の問題は、今後の技術継承と業界の持続可能性に関わる重大な課題です。

建設需要が高まり供給が追い付かない

建設業の需要は近年拡大傾向にあり、国土交通省の調査によると建設投資額は2010年の約42兆円から2022年には約67兆円に増加しています。東京オリンピック関連工事、リニア中央新幹線、大阪万博関連施設、さらに老朽化したインフラの更新需要など、大型プロジェクトが続いています。一方で、働き手は高齢化と若年層の参入不足により減少の一途をたどり、需要と供給のアンバランスが生じています。

こうした状況は、受注の選別や価格の上昇、そして労働環境の悪化といった悪循環を生み出しており、業界全体の持続可能性を脅かしています。

給与水準が低く人材が確保しにくい

建設業の給与水準は他産業と比較して必ずしも高くなく、国土交通省の「建設業における賃金等の状況について」によると、賃金のピークも製造業の50〜54歳より早い45〜49歳です。特に現場の技能労働者は日給制や日給月給制が多く、天候などの影響で収入が不安定になりがちです。

また、建設業では大手企業と中小企業の賃金格差が約250万円と大きく、中小企業では人材確保がより困難な状況にあります。さらに、円安の進行により外国人労働者にとっても日本での就労の魅力が薄れており、人材確保の難しさに拍車をかけています。

現場や会社のイメージが悪い

建設業は伝統的に「3K(きつい・汚い・危険)」と呼ばれるネガティブなイメージが定着しています。

長時間労働や休日の少なさも顕著で、国土交通省の調査によれば、建設業の年間実労働時間は1,978時間と全産業平均より346時間も多く、年間出勤日数も30日多い状況です。特に朝が早く、現場によっては日の出前に出勤する必要もあります。また、女性や高齢者にとって働きにくい環境である点や、体育会系の厳しい雰囲気があるとの認識も根強く、若年層や女性の参入を妨げる大きな要因といえるでしょう。

業界イメージの刷新は人材確保のための重要課題です。

建築業界で人材が不足するリスクやデメリット
建築業界で人材が不足するリスクやデメリット

建設業の人材不足は、単なる採用難にとどまらず、業界や社会全体に深刻な影響をもたらします。新規事業の制限や既存インフラの維持管理の困難さ、さらには技術継承の断絶による品質低下など、様々なリスクを伴います。

ここでは、人材不足がもたらす具体的なリスクとデメリットを詳しく解説します。

新規事業に取り組みにくくなる

人材不足が深刻化すると、企業は既存事業の維持だけで精一杯となり、新たなビジネスチャンスを活かせなくなるリスクがあります。

建設需要が拡大している現在、人員が足りないために受注を絞らざるを得ない企業も増えており、成長機会を逃しています。また、少ない人員で無理に新規事業に挑戦すると、品質低下や工期遅延、さらには労働災害のリスクも高まります。人材不足は企業の存続そのものを脅かす深刻な経営リスクなのです。

構築物の維持や撤去が困難になる

日本の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、老朽化が進んでいます。国土交通省の試算では、2033年には全国の道路橋の約67%、トンネルの約50%が建設後50年以上経過するとされています。

これらの維持管理や更新、さらには不要となった構造物の撤去には多くの人材が必要ですが、人材不足によりこうした作業が滞ると、インフラの安全性低下や都市機能の停滞といった社会的リスクが高まります。特に地方では人材不足がより深刻で、必要なメンテナンスさえ十分に行えない「インフラ維持難民」地域が発生する懸念もあります。

技術や知識の伝承が行いにくくなる

建設業界では、ベテラン技術者から若手への技術や知識の伝承が大きな課題です。

現場でのノウハウや経験に基づく判断力、専門的な技能は、長年の実践を通じて培われるものが多く、マニュアル化しにくい特性があります。しかし、若手の入職者が少ない上に、高い離職率と相まって、技術継承の機会が失われつつあります。

国土交通省の資料によれば、建設業の職業訓練施設数は過去10年で約15%減少しており、組織的な技能育成の場も縮小しています。熟練技術者の大量退職が見込まれる中、技術伝承が滞ると、建設の品質低下や安全性の問題につながるリスクが高まります。

建築業界の人材不足を解消する対策
建築業界の人材不足を解消する対策

建設業界の人材不足を解決するためには、多角的なアプローチが必要です。イメージ戦略から労働環境の改善、人材育成の強化、テクノロジーの活用、外国人材の受け入れまで、幅広い対策を組み合わせることが重要です。

ここでは、業界や企業が実践できる具体的な解決策を紹介し、持続可能な建設業の未来を探ります。

業界や企業のイメージ戦略を立てる

建設業界のネガティブなイメージを払拭し、若年層や女性にとって魅力的な業界へと変革するイメージ戦略が重要です。

国土交通省による「建設業イメージアップ戦略実践プロジェクトチーム」のような官民一体の取り組みや、現場の仮囲いをデザイン性の高いものにする、子ども向けに重機イベントを開催するなどの工夫が行われています。また、ソーシャルメディアを活用して実際の現場の様子や働く人々の姿を発信したり、学校教育と連携してキャリア教育の機会を提供したりすることも効果的です。

業界全体のイメージ向上と併せて、各企業が独自の企業文化やビジョンを明確に打ち出すことも、人材獲得競争における差別化要因になり得るでしょう。

待遇や福利厚生などの改善や刷新を図る

人材確保・定着のためには、給与体系や労働環境の抜本的改善が不可欠です。具体的には、基本給や手当の支給基準・昇給制度の見直し、週休二日制や固定月給制の導入、社会保険の完備などが挙げられます。また、建設業特有の早朝出勤に対応するため、フレックスタイム制度の導入や、子育て・介護と両立できる柔軟な勤務体制の整備も重要です。

さらに、資格取得への費用補助や住宅手当など、従業員の生活全体をサポートする福利厚生の充実も効果的です。適切な処遇改善は、離職防止と人材確保に直結します。

学習や資格取得などを支援する体制を作る

建設業では技術と知識が重要な資産であり、その習得・向上を支援する体制の構築が人材育成と定着の鍵となります。

具体的には、資格取得支援制度の導入や、社内研修プログラムの充実、先輩社員によるメンター制度などが効果的です。特に、建設業で重要な施工管理技士や建築士などの資格取得を奨励し、取得費用の補助や取得後の手当支給など、インセンティブを設けることで従業員のスキルアップ意欲を高められます。

また、デジタルツールを活用したeラーニングの導入や、VR技術を用いた安全教育など、新しい学習手法の導入も検討すべきでしょう。計画的なキャリアパスの設計と、それに沿った教育体制の整備は、若手社員の定着率向上と技術伝承の両面で有効です。

テクノロジーを導入・運用する

少ない人員でも効率的に業務を進めるため、建設業界ではテクノロジーの活用が不可欠です。施工管理アプリやBIM、AIやロボットの導入により、業務効率化と省人化を同時に実現できます。特に従来は手作業で行っていた測量や監視、記録業務などをデジタル化することで、生産性向上と業務負担の軽減につながります。テクノロジー導入は単なる効率化だけでなく、建設業の働き方や安全性を根本から変える可能性を秘めています。

IT

建設業界でのIT活用は、業務効率化と省人化の両面で大きな効果を発揮します。

例えば、クラウドベースの施工管理アプリ「Conne」などを導入することで、現場の写真、図面、工程表、日報などを一元管理し、関係者間の情報共有がスムーズになります。また、ドローンを活用した測量や3Dスキャニング技術により、従来は人手と時間を要した作業の大幅な効率化が実現しています。BIM(Building Information Modeling)の導入は、設計から施工、維持管理までの一貫したデータ管理を可能にし、プロジェクト全体の生産性向上に寄与します。

こうしたIT技術の活用は、人材不足の中でも業務の質と量を維持するための重要な戦略です。

DX

建設業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる業務のデジタル化を超えて、ビジネスモデル自体を変革する取り組みです。

例えば、AIによる設計支援や最適工程の自動算出、ロボットによる施工の自動化などが実用化されつつあります。大手ゼネコンでは、現場巡視ロボット、自動清掃ロボット、自走式墨出しロボット、多能工作業ロボットなどの開発・導入が進んでおり、人手のかかる作業や危険を伴う作業の代替が可能です。また、デジタルツインのような先端技術を活用して現場をリアルタイムに再現し、リモートでの作業管理や品質チェックも実現しつつあります。

DXの推進により、少ない人員でも高い生産性と安全性を確保できる建設現場への変革が期待されています。

外国人労働者を受け入れる

人材不足対策として、外国人労働者の受け入れ拡大も重要な選択肢です。

2019年4月からスタートした「特定技能」制度では、一定の専門性や技能・日本語能力を有する外国人材を即戦力として受け入れることが可能になりました。建設分野ではすでに約11万人の外国人が活躍しており、業界全体の約6.4%を占めています。特定技能外国人の最大の特徴は、技能実習修了者が技能試験免除で移行できることや、建設業では2号への移行により無期限の在留が可能な点です。

外国人材の受け入れに際しては、言語や文化の違いに配慮した職場環境の整備や生活支援体制の構築が重要です。また、円安が進む中、外国人材にとって魅力的な待遇や成長機会を提供することも、優秀な人材確保のためには不可欠といえるでしょう。

建設業で人材不足の対策を行っている事例
建設業で人材不足の対策を行っている事例

建設業界では、人材不足に対する先進的な取り組みが始まっています。デジタル技術を活用した業務効率化や、従業員エンゲージメントを高める施策など、各社が独自のアプローチで課題解決に取り組んでいます。

ここでは具体的な成功事例を紹介します。

デジタル化導入(有限会社永田鋼管工業)

鹿児島県の配管製作・取付業者「有限会社永田鋼管工業」では、建設業向けコミュニケーションツール「Conne」を導入し、社内の情報共有方法を改革しました。

従来は社長からの指示を受けてから動く体制だったものが、Conneの導入により社員同士が工程表などをリアルタイムで共有し、社長の直接介入なしでも業務が進む体制へと変わりました。この変革により、社員が主体的に動けるようになり、意思決定のスピードが向上。結果として大幅な生産性向上を実現しています。少ない人員でも効率的な業務運営が可能になった好例です。

エンゲージメントツールの活用(株式会社アナタカラ建設)

株式会社アナタカラ建設では、従業員エンゲージメント向上ツール「THANKS GIFT」を活用して組織課題の解消に取り組んでいます。

建設業では、設計や積算、工務や事務など各ポジション間のコミュニケーション不足が問題になりがちですが、同社ではTHANKS GIFTを通じて感謝の気持ちやコインを送り合うことで、部門間のコミュニケーションを活性化させています。また、数値化が難しく評価しづらかった従業員の頑張りを、コインの送受信数や「いいね」の数として可視化することで、公平な評価体制の構築にも成功しました。取り組みにより従業員のモチベーションが向上し、業務効率化にもつながっています。建設業では見落とされがちな「人の心理」に着目した対策として、人材定着と組織活性化に効果を発揮している事例といえるでしょう。

まとめ

建設業界の人材不足は、高齢化、若年層離れ、低賃金、厳しい労働環境など複合的な要因で深刻化しています。2024年問題や2025年問題により今後さらに状況は厳しくなると予想される中、解決策としてはイメージ刷新、労働条件改善、人材育成強化、テクノロジー活用、外国人材受入が重要です。業界の持続可能性を確保するため、各企業は自社の状況に合った対策を早急に実施することが求められています。

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